好きには、なれない 【完】

運命と命運 /小紋と振袖



2度目の仮縫いは、1週間後だった。


今日も上機嫌で光が付いてきて、冬也くんはうんざりしている。


『仕立て屋 からくれない』に向かう道中。


「永井君、キミ、卒業後は留学でもしたらどうだい。永井家の援助を受けたくないなら国費で行けばいい。たしか頭は悪くなかったよね」


「なんで、俺が留学するんだよ。オマエが行け」


「僕? 僕はダメだよ。だって、麻友子さんと遠距離になってしまうから」


「なんの話だ!」


「永井君の留学中は、僕が麻友子さんを支えるよ。手とり足取り、しっかり支えるからさ、キミは心おきなく、アメリカでもヨーロッパでも好きなところに行ってくれ」


「だから、なんの話だ!」


「永井君の将来と僕と麻友子さんの将来の話だよ」


「オマエの将来に、俺のばあちゃんを巻き込むなっ!」


光と冬也くんは、ずっとこんな調子だ。


「いらっしゃい、どうぞ」


赤城先生に出迎えられ、1度は云い合いをやめた2人。


しかし仮縫いのため、わたしと赤城先生が隣室に移動するなり、またはじまった。


「永井君、お茶なら僕が淹れるよ。キミのお茶は渋い」


「人の家でつべこべ文句を云うな!」


「座布団は2枚にしてくれ。縁側で寝転びたいんだ」


「人の家でくつろぐなっ!」




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