好きには、なれない 【完】

運命と命運 /犠牲者と守護者



「ここのスープは絶品ね。また来られて嬉しいわ」


「麻友子さんとなら、毎日来てもいいですよ」


赤城先生のとなりで、光が同じスープを口に運ぶ。


白と青を基調にしたフレンチレストランの店内。


にこやかな年の差カップルの真向かいで、わたしもスープをいただく。


たしかに、絶品のオニオンスープだ。


わたしのとなりで基樹も「へえ」とめずらしく声をあげ、スープを飲む手が止まらない。


わたしたちは今 ――


以前、光と麻友子さんが2人で訪れたという、お箸で食べるフレンチレストランにいる。


藤原邸から場所を移したのは、かれこれ1時間ほど前。


アフタヌーンティーの席で、


「藤色の振袖を~」


粘る華子様を光がとりなした。


「じつは僕たち、これから食事に行くんです。麻友子さんも瞳もせっかく着物姿なんだから、お出かけしてみんなに見せびらかさないともったいない」


レストランを予約していると云う光に、華子様も渋々引き下がった。


光は華子様へのフォローも忘れない。


「そういえば、星野夫妻は昨日からリヒテンブルグ公国を訪れているそうですよ。たしか今日は大公主催の晩餐会が開かれるはずだから、あちらの大使にそれとなく帰国予定を聞いてもらいましょうか?」


「まあ、そうなの! お願いできるかしら」


「お安い御用です」


やっぱり光は、口が上手い。



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