好きには、なれない 【完】

花に嵐 /神の策略、閻魔の隠蔽



月の中から、地上を見下ろす。


遥か月下に、夜が広がっていた。


ここがどこなのか、地形からはわからなかったけど、月光はまっすぐに、ある地点を照らしている。


月の導きに身をまかせ、月光のなかを漂うのは気持ちがいい。


可惜夜とはちがった心地良さがある。


徐々に高度が下がり、街らしきものが見えてきた。


さらに降下して、夜の街が近づく。


―― 戻ってこれたんだ。


そう確信できたのは、白亜の時計台を目にしたとき。


見慣れた春晴学院の校舎。


ライトアップされた『天空の時計台』が、午前零時を指していた。


時間軸に変わりはないんだろうか。


最後の不安はそこだ。


せっかく戻れたのに、あれから10年も20年も時間が経過していたらどうしよう。


魂の抜けたわたしの身体が、すでに荼毘(だび)に付されていたら……笑えない。


自分が浮遊霊になるかもしれないという、世にも恐ろしい想像をして首を振る。


「大丈夫、きっとそこは閻魔様が上手いことしてくれるはず。それに、ああ見えても神様だって閻魔様と互角にやりあっていたから、そこそこ力はあるはず。腐っても神!」


月下をめざしながら、神頼み、閻魔頼み。



0
  • しおりをはさむ
  • 1509
  • 5895
/ 480ページ
このページを編集する