世界はキミのもの《完》

第1話 夢から醒めて



 人は絶対的な運命を前に、決して抗うことはできない。

 悲しいことに、私は齢17にしてそれを悟ってしまった。


「ようやく目が覚めた?」

「……」

「ああ、呆けた顔も可愛いね。俺の愛しい〝ひよ〟」

「………。は?」


 目が覚めると、知らない男の人がいました。

(しかも布団に組み敷かれてたりして。え。なんだこの状況)





 第1話『夢からめて』








 目の前には男。

 ただし常人ではない。なぜなら、彼のサラサラした綺麗な銀色の髪の頭には、ふたつのフワフワした〝耳〟がついているから。


「犬の…耳?」

「狼だよ。まぁ、ひよはずっと俺が犬だって誤解してたみたいだけどね」


 どちらにせよ、この男が気違いであることに変わりはない。

 彼はニコニコと微笑みながら私の上に跨がり、顔を覗き込んでくる。


 だから恐る恐る尋ねてみた。

 それは、退いて欲しいという言葉よりも先に口から出てきたんだから、自分では気づいていないだけで、よっぽど気になっていたんだと思う。


「あのー。なんでそんなモノ、頭につけてるんですか?いい大人が気持ち悪いです」

「えぇ!?酷いなぁ。ちゃんと生えてるんだよ?」


 確かにその言葉通り、髪と同じ色の銀毛の犬(狼?)耳はピョコピョコ動いていた。


 一一え、何これ!?どういう仕組み?


 思わず手を伸ばし、ギュッと握り締めて引っ張ると。


「い゙い゙!!」


 彼の神秘的な深紅の瞳が細められ、端整な顔が歪んだ。


「あ、ごめんなさい」


 本当だ、取れない。

 認めたくないけど、この獣耳は確かに生えているらしい。涙目で痛がるくらいだし、神経はちゃんと通ってるみたい。

 耳を押さえてかなり痛がる様子に少し申し訳なくなり、しゅんと眉を下げた。



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