世界はキミのもの《完》

第10話 追憶の章



 午前8時35分ジャスト。毎朝君は予鈴の鳴るギリギリに教室に入ってくる。

 気づけばいつも無意識にその姿を目で追っていた。

 だけどあの日以来、見ているだけじゃ我慢出来なくなったんだ一一。





 第10話『追の章』








「時雨ってさ、好きだよな」

「はあ!?」


 思わず足がぶつかり、ガタンッと机が大きな音を立てた。その結果、クラス中の視線がこちらに向いた。

 まずはそっちに愛想笑いを振り撒き、そしてすぐに目の前の男に向き直る。


「お前、今何て…?」

「あ?だからお前、この焼きそばパン好きだよなって」

「あ、ああ焼きそばパン…焼きそばパンな!」


 彼女を見ていたことがばれた訳ではないと分かり、時雨はそっと胸を撫で下ろした。

 自分でも無意識のうちに目で追っているから、誰かに気づかれても仕方ないとは思うけど、冷やかされるのは御免だ。


 彼女=波多野日和。

 ちなみに名前は3年生になってから知った。


 彼女の存在を知ったのは入学式の時だった。一目惚れなんて柄じゃないが、ふと気になって目を留めた。でも話し掛けるなんて出来る訳がなく。

 だから接点もなにも生まれないまま、ずるずると2年の時が経過した。

 だからこのまま見てるだけで終わるんだと確信していた。まぁそれも仕方ないか、と。

 だけど神は何故か今になってチャンスを与えたらしく、俺と彼女は今年同じクラスになったんだ。

 だが、3年になってもう何ヶ月も経つのに今だそのチャンスを生かせていないのが現実。


「それよりさ、お前来週から部活どうすんの?」

「別に?普通にやるつもりだけど。来週何かあったか?」


 そう言うと、盛大に溜め息をつかれた。



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