世界はキミのもの《完》

第11話 不穏



「ああ聞いたことがあるよ。もしかして君、魅兎の里の…」

「そうや!うちの長に頼まれてここに来たんや」

「普通、里の長の一族の誰かが来るのが礼儀でしょ?」

「言ってる場合ちゃうかったんや。確かに俺はただの一般庶民やけど……なぁ、頼むさかい話し聞いてくれや」


 威勢の良かった彼が里の話しになると途端に辛そうに目を細めた。

 差し迫った事態だった。





 第11話『穏』








 応接間に入ると、鈴華がお茶を持ってきてすぐに部屋を後にした。

 部屋には私と琉狼と兎の彼だけ。これは私がいてもいいんだろうかと思ったけど、完全に言い出すタイミングを見失い、とりあえず邪魔にならないように静かにしていることにした。


「名前は?」

「日野出雲(イズモ)や」

「ひとつ聞きたいんだけど、魅兎達はみんなそんな変わった喋り方をするわけ?」

「いや、俺はいわゆる放浪者って奴で、年中ずっと各地を旅してたんや。そしたらいろんなとこの方言が混じってもてな。気にせんといてくれ」


 耳が揺れる。不謹慎ながら、その長いウサ耳を触りたい衝動に駆られた。もちろん空気を読んでそんなことしないけど。


「気になるよ。だってそれ、不敬にも程がある」

「堪忍してくれや。今、うちの里が大変なことになってて……いや、うちの里に限ったことちゃうねん」

「詳しく話して貰おうか」

「もちろん。最初からそのつもりや」


 出雲は膝の上に置いた拳を強く握り締めた。


「……魅兎の里をはじめ、周りの5つの里が落とされた」

「落とされただって?」

「ああ、中でも一番酷いのは青鼠の里や。集落は見るも無惨な惨状になっとる。うちのが駆け付けた時には、もう生きとるもんは誰もおらんかった」


 琉狼の表情が滅多に見ることのない厳しいものに変わる。



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