世界はキミのもの《完》



「奇襲…?」


 男の人が足早に去るのを見届けてからポツリと呟くと、流が鋭い眼差しで私を見据えた。


「くれぐれも、邪魔はなさらないよう」


 〝くれぐれも〟をやけに強調して言われた。


 一一その言葉は神狼の為?私の為?それとも鬼熊の為?


 出雲の話しのせいで流の言葉を鵜呑みに出来なくなっていた私は、何も言えず目を伏せた。


 一一だけど、もし流さんが本当に裏切り者なら奇襲は成功しない。危ないんじゃ…?


「ひよ、部屋で大人しく俺の帰りを待ってて」

「ちょっと待ってよ」

「あ。もし言うことが聞けないって言うなら俺、君のこと縛り付けて監禁しちゃうかもしれない。だってそれが君にとって一番安全だと思わない?」

「お、思わないから!」

「そう、残念だなぁ。じゃあ大人しくしててね」


 言葉に反して大して残念そうじゃない彼は、一度だけ私に微笑みかけて。


「ご当主、行きますよ」

「ああ」


 私が返事を言う前に、琉狼と流は先程の男の人と同じ方向に消えていった。


「……っ」


 ああどうしよう。言いそびれてしまった。私に話すタイミングを作らせなかったのは流の故意の行動だったんだろうか。

 分からない。ただ今分かるのは流が私にも琉狼にも言えない何かを隠していること。


「さあ目指すは憎き鬼熊!」


 ふとどこからかそんな言葉が聞こえてきた。


 誰か。ねぇ誰でもいいから、嘘だと言って笑ってよ。

 それが叶わないなら、どうか今すぐ戦争を止めさせて。


 一一そうなればきっと流さんだって……。


 段々と騒がしさを増す屋敷を前に私はどうすることも出来なくて、ただ唇を噛み締めた。

 もうすぐ奇襲が開始される。














 その吹き荒れる風の行方は誰も知らない。


(願わくは)
(どうか皆が一一…)



《第12話 完》


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