世界はキミのもの《完》

第13話 敵と味方



「喉が渇いた」

「……」

「おい」

「……」

「水樹」

「え!?俺?まさか俺に茶をいれろと?現在絶賛疲労困憊中のこの俺に茶をいれ……わっ分かったって!!分かったから睨むなよ!ちょいちょいっといれてきてやるから」





 第13話『と味方』








「にしても」


 伊織の前にご所望の茶を置きながら、水樹はちらりとその顔色を窺う。


「珍しく緊張してる、とか?」


 図星だったのかそうでないのかは分からないにせよ、眉根が寄せられ、それにつられて目が鋭く細められた。

 まったく、慣れない奴らが見れば震え上がりそうな威力だ。存外長く彼と時を同じくしてきた水樹でさえ、一瞬ドキリとするくらい。


「緊張?俺が?」

「いや、だってさ。お前喉渇いたなんて普段言わないから」

「ああ、別に他意はない。お前が手持ち無沙汰そうだったから仕事を与えてやっただけだ」


 ……。

 あれが本気で手持ち無沙汰に見えたのなら、この上司に本気で一発見舞ってやりたい。

 己の目の前に積まれた書類の山を冷ややかな眼差しで見つめながら、水樹は密かにそう思った。


「そりゃ親切にどーも」

「まったくお前は何度言えば分かる。敬語を使え」

「堅いこと言うなよ。幼なじみのよしみじゃないか」

「……お前じゃなかったらすぐに首を落とすものを」

「クビにするんじゃなくて斬首かよ……。まあ今のは褒め言葉として受け取ります」

「おい」

「はい?」

「〝あの子〟はどうした」


 伊織の突然の話題転換はよくあることで、水樹は気にすることもなく答えた。


「どうしたも何も、いつも通り穏やかだよ」

「そうか」


 この話題のときが一番緊張すると言っても過言ではない。

 伊織はこのことに酷く狂気的に敏感だ。



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