世界はキミのもの《完》



 現にこの里内でも、迂闊な物言いをして息の根を止められた者は少なくない。

 絶対的な権力者である鬼熊の長、月早伊織。暴君と呼ばれるのに相応しい権力の行使。逆らえる者など無いに等しい程に。

 だが、だからこそ彼の孤独は誰にも理解は出来ないのだ。水樹自身にも、実の兄弟である現在は神狼にいる彼でさえも。


 伊織を唯一癒せるとすれば、それは〝あの子〟だけ。

 傍から見れば依存という言葉がよく当て嵌まる。〝あの子〟の為ならどれだけの血を流すことも彼は厭わないのだから。


 応えてやりたいと思う。

 望みを果たさせてやりたいと思う。


 だからこそ、この戦争は負ける訳にはいかない。


「さっき、緊張しているのかと言ったな?」

「あ、ああ」


 頷くと、不敵に口角が上げられた。


「やはり緊張じゃない。ようやく神狼をこの手で潰すことが出来るんだ。だからむしろこれは……」


 この目が好きだ。容赦を知らないこの目が。

 一一ゾクゾクする。



「歓喜と呼ぶべきだろう?」


 動き出したものはもう止まらない。後は加速するだけ。



 *



 〝大人しくしててね〟と琉狼に言われてから数時間。

 私は例の如く鈴華によって部屋に押し込められていた。だけど今日の見張りはいつもと比べものにならないくらい厳重で、何を言っても部屋の外には出させてもらえそうになかった。


「む。鈴華ちゃんの意地悪!」

「何を言われようが、こればかりは聞けません!万が一ということがありますので」


 珍しく毅然と言い放つ彼女。


「万が一って?」

「万が一は万が一です」

「だからそれって?」

「……日和様を不安にさせるようなことは言うなと琉狼様が」


 一瞬言葉に詰まってからそう言った。つまりそれは「私の口からはとても……」というやつか。



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