世界はキミのもの《完》

第3話 無垢な君



 朝起きると、部屋にはなぜか当然のように白無垢が置いてありました。


「お早うございます日和様。いいお天気ですよ。まさに結納日和!!あ、今のはですね。日和様の名前と晴れた天気の日和をかけまして。やだっ。私ったら上手いこと言っちゃった!」

「……」


 この笑えないジョークに私は笑うしかないんだろうか。





 第3話『無な君』








「ちょっと!!」

「おはよう、ひよ。朝から元気だね」


 ええ元気ですとも。だって、これが黙っていられるわけがないじゃない!

 私はこんなに怒っているというのに、琉狼は布団から上半身を起こして眠そうな目を擦り、嬉しそうに目を細めた。


「朝一番に俺に会いに来てくれるなんて嬉しいなぁ。寝巻きを着替えるのを忘れるくらい早く会いたかったの?」


 そう言われてハッとする。


「でっでも、あんただって寝巻きでしょ!?」

「うん。ひよの可愛い声で今起きたばかりだから。今から着替えようと思って」


 開いたままの障子の隙間から朝日が差し込む。

 琉狼は立ち上がると朝日を見ながら思い切り伸びをし、クルリとこちらに向き直った。


「着替えるの手伝ってくれる?」


 銀色の髪が光を反射し、キラキラと透き通るように揺れた。

 それがあまりに綺麗で、私は思わず息を呑む。目が離せないってこういうことを言うんだと思った。


「あれ……怒らないんだ。それって、肯定の意味?」

「違うっ!大体何で白無垢が置いてあるのよ」

「あ、やっぱりウェディングドレスが良かった?」

「だから何でそうなるのよ」

「一生に一度の結婚式だから、ひよの願いは全部叶えてあげるよ。何がいいのか遠慮せずに言ってごらん?」

「結婚式!?今日やるのは結納式でしょ!?」

「…………ひよ」

「な、何?」

「やっと結納式をする気になってくれたんだね。そうだね。今すぐ振袖を用意させよう」


 ニヤリと口角が上げられた瞬間、嵌められたんだと気づく。


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