世界はキミのもの《完》

第14話 鬼熊の里



 しとしとと降り出した雨。

 戦火と一緒に、哀しみや憎しみ、怒りも全部全部消し去ってくれればいいのに。





 第14話『鬼の里』








 自分の非力さを嫌というほどに実感した。実感せざるを得なかった。

 目を細めると、目の前の男はにぃっと口角を上げ笑った。


「名前は?」


 その質問を無視してただじっと睨み据えた。

 大体、この状態のまま喋れるわけないじゃない。


「ああそうだったな」


 全て見透かしたような、馬鹿にしたようなこの男の目が酷く不愉快で、とても怖い。


「外してやれ」


 男の指示により、口を塞いでいた布が外された。

 それでも、元より私は何か言葉を発するつもりはなかったんだけど。


「名前は、と聞いている」

「……」


 私と目の前の男と、そしてもうひとりその後ろに控えている男しかいない、このだだっ広い部屋の中。

 私の沈黙はそのままこの空間の沈黙へと繋がる。


「生意気な目だ」


 私を射抜く威圧的な視線に本能的に目を逸らしたくなる。

 だけどここで屈してしまえば、これからずっと私は言いなりになってしまう気がして。

 崩れ落ちてしまわないよう、心に張り詰めた糸をさらに張り詰めさせる必要があった。


「……」


 ただ黙っているだけでは埒が明かないと分かりながら。むしろ状況を悪くしているとも知りながら。

 それでも今は抵抗をこんな形でしか表せなかった。


 味方ではないにせよ、私を連れてきてすぐにいなくなってしまった出雲がここにいてくれれば少しは心持ちが変わるのに。


「水樹、刀」

「承知……って、おいおい何する気だ?」


 刀を片手で受け取ると、見せ付けるようにゆっくりと抜き、そのまま私の喉に突き付けた。


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