世界はキミのもの《完》

第16話 救出



 目が覚めると、外が少し騒がしかった。

 その騒ぎが大きくなるのに比例して私の心の不安もどんどん膨らんでいく。





 第16話『出』








「伊織、そろそろ」

「ああ分かっている」


 神狼との戦が始まってから数週間が過ぎた。

 波多野日和を捕らえた時から既に勝機は完全にこちらに傾いている。

 だがとある筋から入手した情報によると、今日の未明にかけて神狼が鬼熊に再度奇襲をかけてくるのだという。

 こちらがそれを知っている以上、もはやそれは奇襲とは呼べないだろうが。


 一一決着をつけるときだ。


 どうせ今回のそれの目的は人質を奪還することだろう。それゆえに以前に攻めてきた時とは奴らの、特に匣森琉狼の心意気が違うだろう。

 そうだ。

 そういう本気の奴を、立ち上がる気力すら失せる程に叩き潰してやるのがこの上なく快感なのだ。

 どうしようもなく絶望させてやりたい。咲紀をあんな目に遭わされた俺のように。

 いや、それ以上にだ。


「水樹」

「ん?」

「あの女を連れてこい。ようやく出番だ」

「でも秀明さんが」

「秀明ならいない。邪魔をされないように少しの間、里を離れる用を申し付けたからな」

「うわ策士」

「いいから早くしろ」

「はいはい承知しました」





 いきなり乱暴に襖が開き、ずけずけと誰かが入って来る。


「な、何ですか」

「早く起きて」

「起きてます!」

「じゃあ早く着替えて」


 有無を言わさずに私に支度を強いるのは、月早伊織の側近であろう水樹。

 現状なんて少しも分からないまま、とりあえず今だけは素直に従った。

 ぞんざいに扱われるのが普通であるはずの人質の私の着替えを待っている彼の気分というものはよく分からないけど。



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