世界はキミのもの《完》

第18話 真実と別離



 大好きなものも守りたいものもたくさんあって。

 そのどれかひとつを選ぶことが出来ない人はどうすればいいですか……?





 第18話『真と別離』








 隙間風なんて入ってこないはずなのに、やけにひんやりとした地下牢の中。

 私と琉狼と流の3人が見守る中、葵は静かに語りだした。


「そんな大層な理由はありません」


 そう前置きする彼は一見毅然としているように見えても、彼の心の奥にある不安を表すかのようにその鬼熊特有の耳が揺れ動いていた。

 葵以外は誰も喋ろうとせず、彼が一旦呼吸を置くと一気に静寂に包まれる。

 そのことがよりこの場の緊張を高め、今私だけが涙を流しているわけにはいかないと思い、きゅっと下唇を噛んだ。


「元々……元々そういう話しだったんです。僕がこの里に人質として差し出される前、今は亡き前当主である父上に〝お前はいつか来る復讐の為に神狼に潜り込むのだ〟と散々言われていましたから」

「……っ」


 それならば彼はここで暮らす何年もの間、一体どんな気持ちで。


「鬼熊からの宣戦布告が僕にとっての合図だったんです。そのすぐ後に日野さんが鬼熊から遣わされているということを知りました」

「だからあの時…?」


 出雲が押しかけてきて話しを聞いたときのあの不安げな表情は、いよいよ神狼を裏切らなければならないという思いから来たものだったんだろうか。

 私の問い掛けに葵は小さく頷く。


「あの時はまだ確証はありませんでした。だけど鬼熊と神狼が戦争になるかもしれないと思うとどうしても怖くて……」

「怖い?どうして?」


 琉狼が鋭い眼光で尋ねる。



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