世界はキミのもの《完》

第19話 ひとりとひとり



 ジリジリと目覚まし時計が鳴り響き。

 朝の訪れを告げた。




 第19話『ひとりひとり』








「もう朝か……」


 大きな欠伸をひとつしてから目尻に溜まった涙を拭いとった。

 もう冬もだいぶん近づき、朝夕は本格的に冷えるようになり昼との寒暖差が激しくなってきた。

 少しの間ベッドの上でボーッとしてからのそのそと起き上がり、なかなか目覚めようとしない脳を叩き起こすように冷たい水で顔を洗い制服に着替えた。


 一息ついてから昨日の夜に作っておいたご飯を温めなおす。

 早々に食事を終えて、時間はかなりあるものの家にいてもひとりやることもないので火元と戸締まりを確認して家を出た。


「うう、さむっ」


 霜がおりていて地面はうっすらと白く染まっていた。



 一一…あれから1カ月。


 私はまるで何事もなかったかのように日常を取り戻していた。

 時雨とこの鈴がなければ、夢と紛うほどに神狼の里で過ごしたあの時間は実感を伴わなかった。


 もう1カ月。まだ1カ月。

 それはとても短く長い時間だった。


 ハァーと息を吐くと少しだけ息が白く残った。



 学校に着くとまだ7時半ということもあり、教室には誰もいなかった。

 朝練をしているらしいトランペットの清々しいロングトーンとテニス部のボールを打つ音を意識の片隅で聞きながら席につく。

 あと30分もすれば誰か来るだろう。


 せっかくだしボーッとしたまま時間を過ごすのももったいなく思えてきて、鞄の中から本を取り出す。

 その時、廊下から話し声と足音が近づいてきた。


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