世界はキミのもの《完》

第20話 渦中の心



 一一時は少しだけ遡り。


 日和が里を去ってから2日。

 たった2日。

 それなのに周りから色が消えていくようだった。





 第20話『渦中の








「ご当主、入りますよ」


 返事はない。


「入りますからね?失礼します」


 返事がないことは重々承知で、もう一度問い掛けてからスッと障子を開いた。


「ご当主」



 別に寝ていたからとか手が離せなかったから返事がなかったというわけではない。

 ボーッと外を見つめている。

 体こそ留めてあるものの、彼の意識はここにはないのだ。


「いつまでそうしているつもりですか。他の里の長に全権を掌握されても致し方ありませんよ」


 目の前に書類の山をどんと置くと、ようやく琉狼の視線がこちらに向いた。

 それでも以前のような力はなかった。


「………僭越ですが」


 琉狼に対しては滅多に見せない、相手を見下すような侮蔑の眼差しを向けた。


「ご自身でご決断されたことですから私にとやかく言う資格はありませんが、どうか失望させないで下さい」


 微かに眉がぴくりと動くが、構わず続けた。


「彼女が来て貴方は変わりました。弱くもなり、そして強くもなった。その強さのせいで私は彼女の存在を認めざるを得なくなった」


 それが正直な思い。


「しかし、今の貴方には堕落しかありません。それはとても残念です」


 そう告げた瞬間、耳を力なくダラリと垂らした琉狼によって畳の上に押し倒されていた。


 ……男が男になんて誰需要ですか。


 と思いつつ、手も自由で抵抗出来るような力だったがあえて何もしなかった。




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