世界はキミのもの《完》

第5話 月のしじま



「あーもう!可愛い!!」


 イラッ。


「もう!くすぐったいよっ。ダメだってば!!ふふふ」


 イライラッ。


「ねぇ今日一緒に寝る?あ、お風呂に入れてあげよっか!」


 イライライラッ!!!





 第5話『月のじま』








「ねぇ、ひよ……さっきから何してるのかな」

「ふぇ?」


 自分の大っ嫌いな生き物を抱きしめ戯れている日和に、琉狼は自然と眉根を寄せ、体からは黒いオーラを滲み出していた。


「何って、狐ちゃんだよ?」


 一一うっ。可愛い。

 首を傾げ、ふにゃりと笑う日和の破壊力は凄まじい。

 ダメだ。ほだされるな俺!


「ソレ、由季だって分かってる?」

「でも可愛いものは可愛いんだもんっ」


 だもんって。……ああ、なんて可愛いんだ。

 押し倒したい。今すぐ押し倒して壊れるほどひよに俺の全てをぶつけたい。

 俺がかなり自重していることを、彼女は知っているだろうか……いや絶対に知らない。


「俺、ひよに〝抱いて〟なんて誘われたことないのに」

「そっそんなこと言ってない」

「一緒に寝る?お風呂に入る?そんなの誘ってるようなものだよ」

「私は由季に言ったんじゃないもん!」

「同じだよ。じゃあ俺も狼の姿になったら一緒にお風呂入ってくれるの?」

「そ、それは……」


 困惑気味に目を泳がせる。


「大体、俺の部屋に連れてこないでよ。狐臭くなっちゃうでしょ」

「うぅ、分かった。じゃあこれからは由季の部屋で…」

「絶対ダメ!」

「何でそんなに怒ってるの?ほらこんなに可愛いんだよ?」


 狐を抱っこしてグイッと近づけてくる。

 まーったく可愛くない。だけど素直にそう言えば彼女は悲しむだろうか。


「ちょっと貸して」

「へ?うん良いよ」


 抱っこしたいんだね!と誤解している日和は満面の笑みでソレを琉狼に渡す。

 受け取ると、狐が嫌がって暴れるけど終始無視。



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