世界はキミのもの《完》
第22話 最後の砦
「ふふふ。相変わらず可愛いね」
「………日和様、葵を口説かないでください。というかその台詞、ご当主みたいですよ」
「なっ!別に口説いてるわけじゃ。だってほんとのことだし!ていうか琉狼みたいって何ですかっ」
「あ、あの!僕なんかより日和様のほうが可愛いですから!」
「あーもーっ!葵君かわいー!!」
第22話『最後の砦』
「にしても、最近ちゃんと葵君と話してなかったから嬉しいな」
確か葵と話をするのは地下牢のとき以来だ。
普通に考えて葵の同行は許されないと思っていたけど、流がいろいろと手を回したらしい。
すると、葵はいつになく真剣な顔をして向私のほうにき直った。
「日和様、あの時はありがとうございました!あと迷惑をおかけして……いや、迷惑なんてものじゃないですよね……。僕は……僕は許されないことをっ!」
「葵、反省しているのでしたら今回きっちり借りを返してくださいよ。元老にもそれで話をつけたんですから」
ずーんと効果音のつきそうな重く暗い顔で話す葵に、流が意図的にかは分からないけど声を重ねた。
その言葉に葵の背筋が伸びる。
「は、はい!お役に立てることがあれば何でも!」
緊張しているらしい。
でも流に頼りにされることが余程嬉しいらしく、ピョコピョコ動く熊耳からは隠しきれない嬉しさが滲み出ていた。
熊耳ってこんなにせわしなく動くんだ……。
「良かったね葵君」
「感謝してもしきれません。先代様にも主様にも時実さんにも恩が増えるばかりです。……でも僕は」
「分かっています。貴方の心が鬼熊にあることもまた事実」
「怒らないんですか…?」
「ご当主が貴方を責めないのならば私にも貴方を責める権利はありませんので」
素っ気ない言い方だけど、なんだかんだで流は葵を認めているよう。
「さぁ、話はここまでです。着きました」
ようやくだ。
その言葉を聞くまでに何時間かかったことだろう。
神狼の里を出たときはまだ辺りは暗かったけれど、今はもう太陽が頭上まで昇ってきている。
あらすじ
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