世界はキミのもの《完》

第23話 守るべきもの



〝彼女が目を覚ました〟

 結局あれから一晩を月早宅で過ごした私たちにその情報が入ってきたのは、次の日の早朝のことだった。




 第23話『るべきもの』









「姉さん!」


 顔を合わせる資格がないと言っていたが、やはりいてもたってもいられなかったのか、朗報を聞いた葵はすぐに彼女の部屋へと駆け出した。

 私と流もすぐにその後を追う。

 部屋の中までは入れてもらえないかと思ったけど、引き留められる前に入り込んだ。


「~~っ、姉さんっ!」


 布団から上半身を起こした咲紀に、葵は目にたくさんの涙を浮かべながら躊躇いもなく抱きつく。


「あ、葵さん!?見ないうちにこんなに逞しくなって……って何だかこれオバサンみたいな台詞ですね」

「姉さんは5年も眠っていたんです。その間に僕だって少しは成長しました」

「そうみたいですね。伊織様も……いえ、伊織さんも少し変わられたみたいです」

「いろいろあったんですよ。本当にいろいろ……」


 その〝いろいろ〟にはたくさんの重くて苦しい出来事が含まれているけれど、そのことを口にしないのが葵の優しさだと思った。


「ええ、また聞かせてください」


 そう言って優しく微笑む咲紀を見て、葵はたまらずまた子供のように彼女に抱きついた。


 一一良かった。

 想像より遥かに優しそうな人で。


 けれどそのとき突然咲紀の表情が固くなった。

 その視線に気づき、先に声をかけたのは流の方だった。


「久しぶりですね」

「…………はい」


 けれどそれは憎悪や嫌悪ではなく、例えるならまさに〝気まずい〟の一択。


 そのとき、今までどこにいたのか伊織が現れた。

 ようやく彼女が目覚めて本当なら付きっきりでもおかしくないのに。


「お前たち来ていたのか」


 とりわけ葵に睨みをきかせる。


「咲紀は病み上がりだ。離れろ」

「伊織さんそんなキツイ言い方をしなくても…!葵さんは貴方の弟なんですからね?それに体は気だるいですが、眠っていた間のことは覚えていないので病み上がりという感覚はないんです」

「だが安静に越したことはない。それに葵が俺の弟と言うのならお前も俺の妹だ」


 その言葉に私はきょとんとするけど、他の人たちはその言葉に隠された本意を理解しているようだった。

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