世界はキミのもの《完》

最終話 新しい始まりに



 あれから1年と数ヶ月が経ち。

 神狼の里ではもう桜が咲き誇っていた。



 最終話『新しいまりに』









「どうだい?準備ははかどっているかい?」


 てきぱきと準備を進める鈴華の元に千里が様子を見に現れた。

 一生に一度の大舞台だ。

 どれだけ華やかにしてもしすぎということはない。


「榊様!見てくださいほら」

「これはこれは立派な白無垢だ」


 それを見た途端、何故か父親のような気分になってしまった。

 幼い頃から見守ってきた琉狼と、その彼が何年もの間恋焦がれてきた日和とがようやく名実共に結ばれるのかと思うと、感慨深いものがある。


「あ!ちょっと葵!」


 廊下を歩いているところを見つけたのか、大声で呼び止める。

 呼び止められた葵は不思議そうな顔をしながら部屋に入ってきた。


「はい?何か僕に用でしょうか?」

「ほら、葵も手伝って」

「え、でも僕今ここに着いたばかりで」

「鬼熊の里からはもう何回も来てるんだから慣れたでしょ。ほら早く手伝う!」

「は、はい!」


 鈴華の勢いに押され、葵も準備を手伝うことになってしまった。


 今日は日和の高校の卒業式の日。

 そして琉狼と日和の結婚式の日でもある。


「琉狼様はどちらに?」

「流さんと打ち合わせ中です」

「おや、では日和君の迎えには誰が?」

「あ、それはですね」




 *




「ご卒業おめでとうございます。日和さん」

「ありがとう悠斗くん」


 後輩からの花束や色紙を持って廊下を歩いていると、懐かしい顔があった。

 学校ではほとんど関わる機会がなかった。


「にしてもまさか貴女が留年されるとは……」

「嫌な予感的中しちゃった。休みすぎて単位とれなかったんだよね。ほとんど琉狼のせいだから、すぐに戻れなかったことも怒ってはないと思うんだけど」


 そう言って苦笑する。

 そのとき。


「波多野!」


 息を切らしながらやってきたのは、私服姿の時雨だった。


「あれ、関係者以外立ち入り禁止なんですけど」

「この学校の卒業生だ!十分関係者だろうが!」

「ほんと、先輩は相変わらずですね」

「お前もな」


 時雨は去年ここを卒業した。本当だったら私もそのとき一緒に卒業するはずだったんだけど。

0
  • しおりをはさむ
  • 275
  • 915
/ 417ページ
このページを編集する