世界はキミのもの《完》

第6話 それは初恋で



 小鳥のさえずりが聞こえる穏やかな朝。というか早朝。つまり朝5時。


「かっ…」


 全力で叫ぶ3秒前です。





 第6話『それは初で』








「可愛いーーっ!!!」


 私はついに耐え切れず、本能のままに声を上げた。

 だけど同時に彼らの耳がピクリと動き、慌てて両手で自分の口を塞いだ。


 一一ふぅ、危ない。起きちゃうとこだった。


 私は急いで押し入れに入っている通学鞄を開け、携帯を取り出した。

 逸る気持ちを抑え、電源をつける。ボタンで操作して画面がカメラモードに切り替わったのを確認すると、携帯のカメラレンズを〝それ〟に向けた。


「ふふっ」


 ピロリロリ~ンと可愛らしい音が鳴りシャッターが下ろされると、画面に〝それ〟がバッチリと映されていた。


「……やっぱり琉狼も好きだったんだなぁ」


 映っているのは、布団の上で抱きしめられている由季と抱きしめている琉狼の姿。

 あ。それだと語弊があるかもしれない。抱きしめられているのは狐姿の由季だ。


「よし!保存しなきゃ」


 だけどボタンを押す前に、なぜだか携帯が視界から消え失せてしまった。


「ひーよー?」


 名前を呼ばれた後にフゥッと耳に息を吹き掛けられ、私は肩をびくつかせた。


「あ……。お、起きてたの?」

「うん。これの音でね」


 琉狼の手には先程取り上げられた私の携帯。画面には狐ちゃんと琉狼のツーショットがバッチリと映っている。


「どういうつもりかな?」

「……狐嫌いって言ってた琉狼が狐ちゃん抱きしめてたから。記念みたいな?」


 ごまかすように笑うと、琉狼が黒い笑みを浮かべた。



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