世界はキミのもの《完》



 この役はどう考えても彼が適任だ。

 なのに無理だと分かっていてどうして自分に……。


「葵、貴方も来て下さい」

「でも僕が行っても何も」

「そうです。貴方はまだ何も出来ない。ここに来て何年も経つというのに」

「うっ」


 ズバリと指摘され、心に突き刺さった。流の言葉にあるのは悪意ではなく真実だからこそ尚のこと。


「貴方は身分を気にして、何においても自身を抑制している。それでは頑固な元老を相手には出来ない」


 学ぶことはまだまだ多い。


「何も出来ないからこそ一緒に来て勉強して下さい。二度目はありませんから」

「精進します……」



 先代によって人質らしからぬ処遇で迎えられ、琉狼によって確かな地位を与えられた。

 返す恩は数えきれないくらいあるのに、自分はいつも迷惑を掛けてばかり。

 それでも捨てず呆れず付き合ってくれて、そこでまた恩が増えていく。


 一一僕の全ては主様の為に。


 そう決めたのは5年前の雨が降りしきるあの日のこと。

 そう。話せばめちゃくちゃ長くなるんです。


「時に、葵?」

「はい」

「今日は葵は夕食は抜きだとご当主からお聞きしたのですが」

「えぇ!?」

「何をしたかは知りませんがご愁傷様です。笑顔でしたが、あれは相当ご立腹でしたよ」


 まさかとは思ったが、あれだけ説明したのにまだ誤解が解けていないらしい。


「ああそんな……」


 今晩はお腹の虫が騒がしくて眠れそうにない予感。
















 憂鬱。だけど充実。だからどうかもう少しこのままで。


(葵君ごめん!私の作ったおにぎりあげるから)
(ありがとうござ、……ああ背後からまた殺気が…)



《第7話 完》


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