世界はキミのもの《完》



「大丈夫大丈夫!大きさもピッタリだし、庭で少しは履き慣らしたから」

「なら良いんですが。痛くなったらおっしゃって下さいね」


 それから数分歩き、木々の間を抜け民家の間を抜けると、鈴華の言葉通り大きな市場が広がっていた。

 まだ朝が早い方だけど、人は多くてかなり賑わっている。

 すれ違う人がみんな頭に耳が生えているこの光景は、人間の私から見れば異様とも言えて、私は目を見張る。


「すご…」

「人が多いですから私から離れないで下さいね」

「うん。あ!ねぇあれ何?」


 私の視線の先には橙色の、蜜柑のようだけど桃のような見たことのないものが。

 基本は人里のものと同じだけど、こういう初めてみるものも多い。


「あれはこの里の特産品の果物です。召し上がりますか?」

「いいの!?」

「お金は琉狼様からたくさんいただきましたから。楽しまないと損ですよ!買ってくるので待っていて下さい」

「あっ」


 思い立って、懐から財布を取り出す鈴華の手を止めた。


「行ってもいい?」

「そうですね」


 店に近づくと、果物特有の甘い香りが鼻をかすめた。

 甘いものは嫌いじゃない。むしろ大好物が苺プリンというくらいだから大好きだ。


「いらっしゃい!全部とれたて新鮮だよ。何にしますかい?」


 並べられているものを興味津々に見つめていると、店のおじさんから声を掛けられた。


「えっと、じゃあこれいただけますか?」

「はいよー」

「あ、お金は私が」


 私自身財布を持っているものの、この里で使われているお金の単位がよく分からなくて、結局鈴華が出してくれた。


「それにしても嬢ちゃん見ない顔だね。鈴華、お前の知り合いかい?」

「そんなところです。彼女は小さい頃から病弱で、外に出る機会が少ないんです」


 人間だとばれないように、鈴華がうまく話しを作ってくれている。

 だから、私が話すと墓穴を掘ってしまいそうで、ずっと黙って2人の会話を聞いていた。



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