世界はキミのもの《完》

第2話 小さな一歩



「ひよ、抱きしめていい?」

「やだ。ダメ!」

「うん。でももう抱きしめちゃってるや。ごめんね」


 顔を見なくとも、彼の口角が上がっているのが分かる。

 もしかしなくても、こんなに誠意の篭っていない謝罪は初めてだ。

 それなのに抱きしめられた途端に鼓動は正直にドキドキと高鳴り、私は気づかれたくなくて彼の胸を両手で押し返した。





 第2話『さな一歩』








 私が理不尽にこの里に連れて来られてから一晩が経過した。

 そして朝になって起きるとすぐ、例の如く迫られていた。


「ねぇ、琉狼」


 名前を呼ぶと、嬉しそうに頭の耳が動く。


「なに?ひよ」

「私、着替えたいんだけど」


 だから離れて、と暗に伝えると、唇を尖らせてさらに強く抱きしめられてしまった。


「昨日一緒に寝るつもりだったのに、ひよの我が儘を聞いてあげたんだ。だからこれくらい許してよ」

「我が儘って…。一緒の部屋でしかも同じ布団なんかで寝れるわけないでしょ!」

「明日結納を済ませたら一緒に寝るから。覚悟しておいて」

「だから結納なんてしないってば!!流さん流さん!!ご当主さんがいかがわしいことしようとしてますよー!」


 叫ぶと数秒後、障子がスパンッと音を立てて開けられた。


「ご当主!」


 明らかに年下の琉狼に振り回されているのは、流的にいかがなものなんだろう。

 それは私には分からないけど、急いで来たせいか長着が着崩れている。


「流。お前の主人は俺でしょ?命令には従ってくれなきゃ」

「命令違反はしておりません」


 キッパリと言い切る流に琉狼はすぐに納得顔になる。


「ああそういうこと?」


 何のことだか、あいにく私にはサッパリだ。


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