下田君に振り回される。【完】




「…天才になりてぇ…」



その悲痛な願いは「おらおら、お前ら席着け―」という担任大ちゃんの怠そうな声でかき消された。けど、戎君の近くにいるあたしにはちゃんと伝わった。



うん。その気持ちよく分かるよ、戎君。



大ちゃんが来てしまったからあたしは仕方なく自分の席に行く。HRが始まり、その間にあたしは相当悩んでいる戎君のことを考えていた。



あんな難しいテストをもう一度1人で解いていくのは辛すぎるし、精神的にも肉体的にも厳しい。このまま来週の追試まで戎君が1人で勉強したら本当に死んじゃうかもしれない。



「…、」



どうにかして助けてあげたい。
だって戎君は唯一のあたしの仲間だから。




――――――…






「戎君、」

「…ん?」




HRが終わり、1時間目の授業は移動教室だった。みんなが移動する準備をしている間にあたしはもう一度戎君の元に向かう。



相変わらず眠そうな顔をしている戎君は瞬きをして、その目であたしを見つめる。



「提案があるんだ」

「てーあん…?」

「うん、移動しながらでもいいから聞いて」

「…なんだよ?」




不審そうに片眉を上げた戎君はノートと教科書、ペンケースを持って席を立った。





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