下田君に振り回される。【完】




階段の踊り場でガミガミ言い合うあたしと戎君の横を迷惑そうに生徒たちが通って行く。その中にあーちゃんもいて「うっさいうっさい」と言っていたのをあたしは聞き逃さなかった。



しかし、今は戎君を説得させる方が先である。




「大丈夫だよ、本当に。信じて」

「…俺泣いちゃうよ…」

「あたしもいるから大丈夫だよ、泣かないで」

「…怖くて勉強になんねぇよ…」

「なるよ。嘘だと思ってやってみようよ」

「…ホントに?」

「うん」

「ホントに下田優しいの?」

「これは嘘じゃない」

「……、」



眉尻を下げて、どうしよう…と悩み始めた戎君。「やる」と頷くのをソワソワと待つあたし。



チラ、チラ、と何度もあたしの顔を見ては不安げに瞳を揺らす戎君は、だんだんあたしの意見に揺らいでいるように思える。




「っ…」



小さく口を開いた戎君に、あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。





「…きょ、今日だけだぞ…」

「!」





キタ!



0
  • しおりをはさむ
  • 302
  • 15432
/ 434ページ
このページを編集する