心のキズにキスをする。【完】

5.誘われる女



────────…




「とても美味しかったです」

「当たり前」



空っぽになった皿にスプーンを置く。浅倉君の大きい態度に苦笑いを浮かべつつ、時計を見ればもう少しで日付を超えそうな時間。


こんな時間にチャーハンを食べたこと。ちょっと後悔。だけど美味しかったし、たまにはいいだろう。



テレビに目を向けている浅倉君は、眠いのか小さく欠伸をした。目尻に浮かんだ涙を手で拭い、「もうこんな時間か」と独り言なのか話しかけているのか分からない音で呟いた。




「…、」



テレビの音に耳を傾けながら、2人分の皿をキッチンへ持っていく。後で洗うのは面倒だからさっさと洗ってしまおうと水を流せば、「ねえ」と声が届いた。



目を向けた先に、あたしのスマホをプラプラと揺らしている浅倉君。



「LINE来てるよ、洋平先輩から」

「…置いといてください」

「‘明日会えない?’って」

「っ見たの?!」

「見えちゃったの」



それは見たうちに入るんだよ!と地団駄を踏みながら訴えれば「下の階の人に迷惑だから」と冷静に注意される。




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