心のキズにキスをする。【完】

6.試される女






「(…おっ、と)」



シャワーを浴びて部屋に戻ると、ベッドの上で浅倉君が寝息をたてていらしゃった。スースーと規則正しく上下している胸。


足音をたてないようにベッドに近づくと、浅倉君の見慣れない寝顔を上からそっと覗き込む。目は完全に閉じ、口は微かに開いている。



「…、」



まさか寝ているとは。と、思ったけれど時刻は既に深夜3時を回っている。それは眠いに決まっている。


今日着ていた服で寝ている浅倉君に、上から毛布を1枚かけ、あたしはベッドの下に座った。




浅倉君の寝顔なんて見るのいつぶりだろう。授業中に寝ている姿をよく見ていたから、かれこれ4年ぶり…?


髪をタオルで拭きながら、当時のことを思い出す。




浅倉君とは中学3年間、同じクラスだった。初めて同じクラスになった中学1年生のとき、あたしは浅倉君のことが少し怖かった。


綺麗な顔をしていた浅倉君の周りにはやんちゃな男子がよく集まっていて、目立つグループだった。先生たちにも注意されている姿をよく見ていたし、派手な女子と喋っていて正直うるさかったし。


だけど、友達と平和に生活したいと思っていたあたしはそれを迷惑に思いつつ黙って見ているだけだった。




それなのに──────。



0
  • しおりをはさむ
  • 607
  • 14868
/ 474ページ
このページを編集する