心のキズにキスをする。【完】

2.変わらない女







「じゃー、今日という日に乾杯!」




ジョッキやグラスがぶつかる甲高い音。茉菜さんの知り合いの人の一声でようやく飲み会が始まる。


それぞれ注文した飲み物が、それぞれの喉を勢いよく流れて潤していく。あたしは律儀にオレンジジュースを飲んでいる。

口の中にオレンジの香りが広がったとき、テーブルにグラスを置いた。



「とりあえず自己紹介じゃね?俺、茉菜のことしか知らねぇもん」



あたしの正面に座っている茉菜さんの知り合いの男性はビールが入ったジョッキを片手にこの場を仕切り始める。



「俺は茉菜と同じ大学で3年。で、井槌洋平いづちようへい。ちなみに彼女はいません!」

「聞いてねえよ」



真っ先にツッコんだのは茉菜さん。強烈な一言に井槌さんはちょっとだけ顔を赤くして「うるせえ!」と口を尖らせた。


意外と照れ屋なのか、とチビチビとオレンジジュースを飲みながら思う。前髪を上げているせいで、綺麗なおでことシュっとした眉毛が良く見える。





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