心のキズにキスをする。【完】

12.好かれる女









──────────<今日吉村んち行っていい?>



水曜日、授業中に来た浅倉君のLINE。あたしがそれをオッケーとしなかったのにはちゃんと理由がある。



一瞬でも考えてしまったからだ。浅倉君があたしを‘そういうことができる女’だと認識しているのではないかと。


浅倉君からのLINEが届く直前、明日香と交わした会話が強くあたしの心情に影響を及ぼした。バイト先の男性にキスをされた明日香。部屋に行きたいと言われた明日香。


一般的に女性にそういう言動をする男性は、体目的だと思われてしょうがない。あたしだってきっとそう思う。一般論に賛同すると思う。




それは同時に浅倉君があたしに起こしたこれまでの言動すべてを一般論と結びつけるものとなってしまった。浅倉君だってそうかもしれない。あたしをそういう目で見ているのかもしれない。



キスができる、セックスができる。自分の欲望を満たすのに利用できる女だと思っているのかもしれない。




嫌だった。無理だった。そうはなりたくなかった。あたしはこれ以上都合のイイ女にはなりたくなかった。彼氏の浮気を4度も許すような女の上、浅倉君の欲を満たすような女にはなりたくなかった。





だから、断ったのだ。<ごめん、無理>と浅倉君に送ったのだ。自分をこれ以上ダメな女にしないように、都合のイイ女にしないように。






────────あたしがそう返信をしてから、浅倉君から返事が来ることはなかった。







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