holic 下

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切り替わった空気を、肌で感じながらも臆することは無い。一度でも気を抜いたら、空気は光希に味方してしまうから。




「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」




私が腰を下ろしたことを目視するとすっと笑みを消した光希はそう呟いた。




「よく出来た言葉だよねぇ」


「外堀を埋めることや根回しは光希が得意とすることよね」


「ははははは!確かにそうだ。ビジネスにおいては鉄則だからね。目先の利益に目が暗み、足元を掬われてはビジネスマンとは言えないからね」



大企業の重役を務める光希は策略に長け判断力、実行力も尚のことビジネスにおいての先見の明には年寄りばかりの重役クラスも一目を置いているほどの人間。


さすがは香坂家の血を色濃く継いでいるといっても過言ではない。




一変してまたにこりと笑みを浮かべる光希はなおも口にする。



この空気、この空間を掌握しているのはさも自分だと。
そう捉えるには十分な牽制。



呑まれるな。



年齢や経験値の差は歴然。
圧倒的な威圧感をまざまざとみせられた。


けれど、この程度で根を上げていてはこの世界では食い物にされるだけ。




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