holic 下

#11






「今日からまたママと一緒よ」


そう言って現れた母親は、あたしの記憶にある風貌とは大分かけ離れていた。


それでもなんの疑いもなく、母だと分かったのは耳馴染みのいい声色と、待ち続けた優しい手。



どのくらい母親と離れていたかは、正直よく覚えていない。


実際問題そんなことはどうでも良くて。



「絢香ちゃん。ママは仕事に行くからいい子でお留守番、していてね?」



例え、母親が派手に着飾ったりむせ返るような香水の香りを纏って、夜の街に出かけることだって。


朝起きると化粧を落とした、よく知ったあたしのママが隣で眠っていることの方が重要なことだった。




「……ママおかえりなさい」



母の顔が少し、やつれた気がする。



母娘2人で暮らしていく為には、時に寂しさを我慢する必要があると知った。



だからこそ、母の手を煩わせないようにいい子でいなきゃいけない。



そうでなければ、また母と引き離されてしまう。



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