サイドキック【完】

番外編 /後編







懐かしい。昔となんら変わりのない倉庫を見上げ、ゆるりと持ち上がる口角を慌てて引き結ぶ。

そんな私を見たらしいヒロヤが隣で「お前……大丈夫なのか」と洩らしていた。本気で不安げだ。



「大丈夫に決まってんだろ。誰だと思ってんだ」

「なんっかイマイチ締まりがなってねぇ気がするんだよ。大丈夫なのか」

「何回も言わせるなよ!」



思わず噛みつくような声音で言葉をおとす。締まりがなってねぇのは私じゃなくてオマエだろ!

にやにやと破顔している男にそう言ってやれば、「俺はいいんだよ。モトからこうだから」と何食わぬ顔で返される始末。なんて野郎だ。






「いいねー、ユウキ。やっぱ男装してたほうがお前らしいな、俺から見れば」

「………、新さん」




右に並んだヒロヤに視線を飛ばしていれば、ふと左側からおとされた声音に顔を向けた。それにやたら色気を感じるのは気の所為だろうか。








そう、いま私たちが見上げているのはかつての居場所だった"聖龍"の倉庫で。

こうして真ん前に立ってみると色々と込み上げるものがある。あの頃は未熟で、強がりで、ただ必死だった。なにに向かうにしても。





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