君にキスと奇跡と花束を

君にキスと奇跡と花束を



「ケーキいかがですかー。オーブのケーキ、残りわずかでーす」


寒空の中、チラシを配りながら大声でお客さんを呼び込む。だが当然素通りで、誰も足を止めようとはしない。

今日はクリスマスイブ。恐らくみんなもう予定が決まっていて、ケーキの予約だってとっくに済ませているのだろう。


だから屋外でこんな風に今更呼びかけたって売れるわけがない。予約の品をこなすだけでいいだろうにと思うのが正直なところだが、これも店長命令だから下っ端は従うしかない。



はぁーっと冷たくなった手に息を吐き擦り合わせると、何気なく隣のお花屋さんを見た。

そこには頭から足先までサンタコスのお兄さんが、頑張ってお花を私と同じように手売りしている。

スノウドロップにビオラ、椿。冬の花がたくさん並んでいる。

だけどやはりうちの店と同様、足を止めようとする人はいない。すごく綺麗なのに。お花が可哀想。帰りまで残っていたら買って帰ろうかな。


……ていうか、隣に男の店員さんなんていたんだ。



「あー、さみぃ、お疲れ。亜沙ちゃん」


そんなことをぼんやりと考えいると、お店から身体を震わせながら前屈みで出て来た同じアルバイトの須藤くん。

そうえいば今日は7時から彼とシフトが同じだったっけ、と思いながらお疲れと返した。


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