君と明日を駆ける



「あいつさ、モテるだろ? だから苦労すると思うぞ」

「えっと、有川、私……」

「いや、いい。なんも聞きたくない」


耳をふさぎ、あーあーと、わけのわからないことを叫んでいる。

ほんと、こういうところが子供っぽいというか。だけどこんなところも嫌いじゃない。

いまだ耳栓をしてぶつぶつ言っている有川に、ありがとうと口をパクつかせると、有川は一瞬キョトンとした後、口元だけニッと笑ってみせた。


ずっと抜け道のないトンネルの中にいたような気持だった。だけど光が少し見えてきたような気がした。


窓から入ってきた風は、夏の香りがした。


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