プラスチックエリア【完】(オリジナルバージョン)

 ジンちゃんが校長室に呼ばれた事でオレの置かれている状況がはじめて学校や他の大人に伝わった。

 当時まだネグレクトどころか、虐待なんていう言葉が浸透していない時代だったせいか、母親は注意を受けたものの何となく上手く逃れてオレは児童相談所とか行くこともなかった。

 もし、そういう所に行っていたら今のオレはいないかもしれない……そう考えると、あのイヤな思い出も無駄ではないという事なのだ。


 オレはそれからジンちゃんの家で朝飯と夕飯を食わせてもらうようになった。

ジンちゃんのかあさんは「もっと早くこうしてあげてればよかったね」と、オレの為に泣いてくれた。

 そしてオレは、風呂に入れる代わりに銭湯の掃除を手伝って、ジンちゃんの家の子になったような気分だった。

綺麗な服を来て、綺麗な布団で眠れるのは幸せだと知った。

三度のご飯が幸せだと知った。


 随分後になって知った事だけど、母親……いや、母親の再婚相手の代理人と名乗る男がジンちゃんの家にオレの食費・生活費と言う名目で現金を置いて行っていたらしい。

 ジンちゃんの両親は何度も受け取らないと突っぱねたらしいが、毎月置いて行ったとアニが教えてくれた。

 母親がいなくなってからも、オレが高校にあがってしばらくは生活費というのを持って来ていたらしいが、事情を説明して持って来ないでほしいと言ったそうだ。

 もうオレもデビューしていたし、ジンちゃんの実家で生活はしていなかったからだ。

 ジンちゃんの両親はそのお金をずっと使なかった。

オレが高校2年に上がった時に全額を渡してくれた。

 オレはその時ちょうど銭湯の修繕工事をしていた業者にそれを全部支払った。
 請求書を見たジンちゃんの両親がすっ飛んで来て泣いた。

 もっとも、それはオレが稼いだお金ではないけれど……オレは自分が初めて親孝行出来たような気がしてことがうれしかったのと、そんな風に涙を流してくれるほど喜んで抱きしめてくれたことが、嬉しかった。

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