プラスチックエリア【完】(オリジナルバージョン)

「中で待っててよ。桜と嫁に配達に行ってもらってるんだ、すぐ帰るよ」

「あ、はい」


お兄さんの顔を見るのが少しだけバツが悪いというか申し訳ない気がした。



「臣くん、コーヒーでも飲む?」

「あ、お心遣いありがとうございます! おかまいなく」

ホワホワと湯気のあがるいい香りのコーヒーを出すとお兄さんはオレの前に座った。


「……桜は、どう?」

「えっ?  ど、どうって……えっと、超かわいいです。オレには勿体ないぐらい」


お兄さんはアハハと笑った。


「それは、うれしい事をいってくれるね。兄として礼をいうよ!」


そして静かに喋り始めた。


「うん ……いやね、両親が亡くなってから桜は前にもまして気が強くなってね。あんなじゃ彼氏なんて出来ないだろうなぁと思っていたからね。それがこんなイケメンの好青年を連れてくるんだもんなぁ、嬉しくて」


お兄さんは窓の外を見た。

クリスマスの買い物をした人たちが足早に通り過ぎる。


「クリスマスにあったあの件、聞いた?」

「……はい」

「悲しんでる暇もないって具合にクリスマスはケーキの注文もあるし、忙しくしてたからね」


忙しくしてる方が余計な事を考えなくていいのは解る気がして頷いた。


「でも今年はさ、嬉しそうに言うんだよ『学校のクリスマスパーティーに行っていい?』ってさ……『ほしいドレスがあるんだけど買ってもいい?』ってね。店の手伝いも頑張ってくれてさ」

お兄さんは何だか嬉しそうだった。

「バンドやってるだろ?  下手くそな女の子バンド。それで化粧は時々してたけど、髪もあんな短くしてるし、色気ねえなぁとは思ってるけどね。最近は、なんか本当にちゃんと女の子になったなぁって」

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