プラスチックエリア【完】(オリジナルバージョン)

Cloudy sky 2 /Sakura22

……お願い。

お願いよ。


神様。もう誰も連れて行かないで……お願い。

おとうさん、おかあさん。
臣くんのことを、守ってください。

私は祈るように願った。




 夜の病院の廊下は嫌い。


 薬品の無機質な臭いと、温度を感じないタイル。


待合室の妙な暗さに自動販売機の明かりだけが嫌味なくらい眩しい。


「桜ちゃん、大丈夫だよ。傷はたいしたことないし命に何かあるような事はないから」


ユーマさんが優しく微笑みながら言った。


「ちょっとだけ、疲れてたみたいだね……ここのところ臣くんなりに色々と考えたりしてたからね」

「……そうですね」

「桜ちゃんも、大変だったよね」

「いえ、私なんか……全然」


 病院の廊下に置かれている椅子は固くて冷たいビニールみたいな質感で、私の体温まで奪っていくようだった。

病室からジンさんとアニくんが出てくる。


「よく眠ってる……心配いらないよ」


そう言ったアニくんに続いてジンさんが笑った。


「アイツ、アホだよな! ほんと、寝不足って……さすが臣だわ」


意地悪に笑ったジンさんに救われた気持ちになる。


「薬も効いてるしまだ起きないと思うけど、顔見ておいで?」

「いいんですか?」

「いいもなにも、桜ちゃんは臣の家族になる人だろ?」

「!」

「あれ? 違った?」

ジンさんが意地悪な口調で少しおどけてみせた。


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