プラスチックエリア【完】(オリジナルバージョン)

 暫くしてアニと社長がやってきた。

アニは明るく笑ってオレの頭をガシガシと撫でた。


「大丈夫か? すげえな、おまえ。刺されるとかなかなかできない経験だぞ」

「あはは、うれしくないよ」


アニはふっと微笑むと静かに言った。


「腕じゃなくてよかった」

「うん。ベース弾けなくなったら、オレ、泣いちゃうかも」

「あはは、そうだな。オマエがベース弾けなくなったら、プラエリは解散だよ」

「……てへ」


不謹慎だと思いながらもアニの言葉は少しだけ嬉しかった。


「綾乃が心配してたぞ」

「ん……そうだよね」

「美里も……愛ちゃんも。みんな、オマエが大好きだから」


オレは顔の前で手をぶんぶんと振って見せた。


「なんだよ」

「ああ……アニ、やめて」

「?」

「そういうのダメ。オレ、泣いちゃいそうだから」

「ははは。泣けば?」


アニはクスクスと笑いながらもう一度オレの頭を撫でる。


「ジンが帰ってこねえうちに泣けよ」

「……」

「泣いていいんだよ。オマエ、すげえよ。かあちゃんの一件からずっと踏ん張ってたじゃんか……桜ちゃんの前で泣くなよ。だから、今泣け」



胸の傷は痛くもなんともなかった。

でも、胸の中がガンガンと響くように痛かった。


「どうせ桜ちゃんの前でもかっこつけて泣けねえんだろ? 泣いとけ……偉かったな」


オレは泣いた。
子供の頃からあんまり泣かないほうだけど、泣きたいときもあるんだと、この年になってわかった。

アニはオレが泣き止むまでずっと頭を撫でてくれていた。

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