プラスチックエリア【完】(オリジナルバージョン)

溶けるような時間は私を無意識に束縛する。


でもそれは心地のいい束縛で、されていないと不安になる。



どうか、私を離さないでと願うように彼とキスをする。


臣くんのかわいいおねだりに、私は嫌だと言えない。


甘えるような瞳が私をダメにするんだ。



鼓膜に張り付くような、優しい声が支配する。



「桜……きもちいい」

1文字づつゆっくり音にすると、フニャッともフワッとも付かない微笑みで包み込む。


私はいつからこんなにも欲張りでいやらし子になったんだろう。

彼を求めて求めて、躰の奥の方がジワンと熱くなる。


家に戻ると明日パンを持って行くことをお兄ちゃんに伝えてお風呂に入った。


 自分で触れる感覚と全く違う彼の指や唇を思い出すと、お腹の下がしっとりとおかしくなっていく。


「ああ。マジで不謹慎」

生きててよかった、大怪我じゃなくてよかったとあんなに安堵して、それだけでいいと思ったのに……彼が欲しい。

欲しくてたまらないんだ。


もっと愛して、もっと抱きしめてほしいと思う。


こんなんで一緒に住んだら、私はどうなってしまうのだろうか?


そんな事を思いながらバスタブに沈んでみる。


今夜はよく眠れそうだ。


明日は、何のパンを持って行こうかとスイッチを切り替えたのだった。



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