プラスチックエリア【完】(オリジナルバージョン)

 ベースを担ぎながらユーマくんに笑いかけた。

「オレ、珍獣?」

「そ、愛すべき絶滅危惧種」

「あはは、もうDTじゃないよ?」

「はは! そこじゃないんだな……シアンこそこがプラスチックエリアってことだよ」


 CMあけます、と声が響いて暗くなると青いライトが不規則に回ってオレ達を照らした。


 音が重なり、ドンっと前に出ていくようなエネルギーが発生すると嬉しくて、弦に乗る指がメロディーを紡ぎ出す。


 そういえば、オレの指先はいつからか硬くなったんだろうか。

 まだ下手くそで弾くというのもちゃんとできない頃、弦を触るのも痛い時があったけれど、それを越えてこんな風に音を続けることができるようになったのはいつからだろうか?


何時間でも触れていたい。



そう思うのはベースも桜も一緒だと思って少しだけ笑った。



今日も、ジンちゃんの声は最高に痺れる。

自然に鍛えられた喉と腹の奥から安定して出る歌声は、類を見ない素敵さがあって耳に残るものだ。


アニのドラムはかっこよくて、アニそのものみたいにまっすぐなリズムとアメと鞭みたいに使い分ける強弱が心地よかった。


ユーマくんのギターは相変わらずのエロティック具合に、優しさがのかった。


ソロのときは絶対に愛ちゃんのことを考えながら弾いていると思った。


オレはそんなみんなの音に恥じないように負けないように、オレの今の音を鳴らした。


たのしい。と、うれしいと、ありがとうを沢山音に詰め込んで弾いていた。


帰ったら桜が待っている……帰ったら、久ぶりに彼女に触れよう。



ベースは前よりもずっと歌うように鳴った。


1音1音が光の粒で見えるみたいに、優しくてキラキラしているのだった。



 

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