プラスチックエリア【完】(オリジナルバージョン)

感謝SS /3

 お兄さんの奥さんと桜で襖の中の衣装ケースを出した。

「あ。これなんかいいんじゃない?」

『浴衣』と書かれた透明のケースには浴衣が何枚も入っていた。

そのうちの半分は桜やお兄さんが小さい時に着た浴衣や甚平だった。

オレはその様子をみながらアイスカフェオレをいただいて、すっかりリラックスモードだった。


「臣くん」

お義姉さんに声をかけられハッとする。


「どっちがいい?」

「?」


「紺の下地に白色の紫陽花が描かれた浴衣と、白地に紺と薄紫で撫子が描かれている浴衣。素敵でしょ?」


桜は恥ずかしそうに紫陽花の方を指さした。

「こっちのほうが地味でいいよね?」

「……」

オレは首をぶんぶんとふった。


「オレはね、こっちのほうがカワイイと思う」

「そ、そうなんだけど……かわいすぎるから」

「いいじゃん、かわいいの着なよ」

桜が困ったように浴衣を見ていると、お義姉さんが言った。


「ほら、だからこっちのほうがいいっていったじゃないのぉ。ね? 臣くん。こっちの、撫子の方が桜ちゃんに合うわよね」

「はい!」

紺と薄紫の撫子の所々ランダムに薄い桜色の花がある。

かわいらしくて、桜にぴったりだと思った。


「……でも」

困ったように何かをいいかかた桜を見てオレはムムっと眉間に皺を寄せた。


「オレ、こっちがいい」

「臣くん」

「こっち着てほしい。お願い」

「……」

「こっちの紫陽花もかわいいけど、桜はかわいいから、もっとかわいいのがいいもん」


桜はプっと噴き出して大きく頷いた。

「もんって……わかった……似合わなくても離れて歩かないでよ?」

「絶対似合うもんね! 絶対かわいいからね!」


お義姉さんがクスクス笑いながら奥の部屋にふたりで入った。

「帯は赤い方がいいね」

「そう……かな」

お兄さんが厨房から覗いてオレを見た。


「桜のヤツが浴衣着たいなんて天変地異だよ」

「あはは、そんな事ないですよ」

「いやいや、あるよ……女の子になったなぁって」


嬉しそうなお兄さんはお店からの声に「はーい、伺います」と言って戻っていった。




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