純情ロマンチックヒーロー【完】 

1恋は落ちるもの /2

 学校帰りにお花屋さんに庭の剪定を頼みに行くとマサさんは快諾してくれた。


「店は休みなんだけど午前中はバラの手入れをしなくちゃいけなくてね……ちょーっと忙しいから午後で大丈夫?」

「勿論です。ほんと、急にごめんなさい」

「いやいや。今日だったら本気で忙しくて断ったけど、明日は大丈夫だよ」


マサさんはカレンダーにうちのお店の名前を書き込みながら笑った。



 翌日、約束通りに午後になってすぐにマサさんが店に顔を出した。

マサさんの後で紺野くんが恥ずかしそうに頭を下げた。


「絹代さんこんちわ! 庭に勝手に入るよ」

「はいよ! お願いね」


フクを私の部屋にあげておいて正解だった。

そう思いながら朝から忙しくてようやく一息ついたのは丁度3時のお茶の時間だった。

「マサさん! 休憩にしませんか? スイカ切ったんでどうぞ」

「おお、ありがたい! ちょうど喉が渇いたところだったんだ。おい! シン」

「ハイ?」

「お茶いただくぞ、休憩だ」

「っす」

パンパンと作業着のズボンを叩きながらやってきた紺野くんは私を見て目を丸くした。

「……」

マサさんが手を洗い終わると紺野くんは頭に巻いていたタオルをとった。

庭の水道で手と顔を洗ってそれで拭いた。



「いやぁ、生き返るなぁ」


そう言ってマサさんは麦茶を一気に飲んだ。

紺野くんもコクンと頷いて麦茶を飲み干した。


「スイカもどうぞ」

 サラサラの無造作ヘアでなかなかのイケオヤジ……いや、オヤジと言うにはまだ若いだろう……マサさんは都会の方で昔ホストをやっていたとか、キャバクラの店長だったとか極道の人だったとか色んな噂があった。

 背中のアレから察するに、そのスジの人なんだろうけれど本当の事は誰も知らない、そして、そんな事を細かく気にするような人間はこの町にはあまりいないのだ。

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