好きと言って、キスをして。

小さな世界 /言葉に出して


「…大丈夫ですか?」


聞き覚えのある優しい声が、耳に届く。


「………ぉお、くぼ…さん…?」


顔をあげれば、やっぱり。


「…伊織ちゃん!」

驚いた顔で私を見る、大久保さんの姿。


「……どうしたの。立てる?」
「っ…はぃ」

いつまでも立てないでいた私。

大久保さんに支えられ、なんとか立ち上がる。

「大久保さん…なんで…」
「会社の同僚たちと花見、してた。というか、なんで、は俺の台詞だよ?」

困ったように笑うのは、前と同じ。

「…俺の台詞だけど、言わないね」
「………」

何も聞かないでいてくれるの?

何かありましたって、傍目に見てもわかるのに。

「……」
「……送るよ」
「ぇ?」

「このまま、一人でなんて帰せないよ、俺」
「だけ、ど…」

「何も言わないで。俺に助けられていいんだよ」

どこまでも、どこまでも優しい彼の言葉が、ストンと心に落ちて。

「っ…」

また涙が溢れてしまう。

「おいで、車停めてある」

私の鞄を拾って、彼はそっと肩を抱いた。

0
  • しおりをはさむ
  • 32
  • 12
/ 272ページ
このページを編集する