好きと言って、キスをして。

ヒミツの恋 /足枷



「あー、美味しかったねぇ」
「ご馳走様でした!」

店を出ると、風が冷たかった。

「寒い…」
「……そういう発言は、聞き逃せませんね」
「え。ぁ…」

キュ。

と、握られた右手。

初めて、大久保さんと手を繋いだ。

「……駅まで、結構歩くから」

誰かと手を繋ぐなんて、すごく久しぶりな気がする。

「伊織ちゃん?」
「は、はい」

「もしかして、緊張してる?」
「そ、そういうことを聞かないでください!」
「はは、ごめん」

大人の余裕は、ずるい。

「……俺が、緊張してるから」

「えっ…?」

「いい歳して、カッコ悪いね」
「そんなこと…ない、です」

大久保さんも、緊張して、くれてるんだ…。

「よかった。離されなくて」
「大久保さん…」

「実は、ずっと思ってて」
「……?」

「伊織ちゃんは、たまにだけど、心ここに在らず、みたいな…そんな時があるから」

「大久保さん、あの」
「ごめん!もしかしたら、なにか、足枷っていうか。気がかりなことがあるのかな?なんて、勝手に思ってた!でも、俺の勘違いだね!」

明るく笑って、手を繋ぎ直した大久保さんに、
私は何も言えなかった。

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