花にココアを注いで【完】

本編





ずっと握りしめていたシャープペンシルを置き、卓上の時計に目をやる。


午前3時17分。




物音を立てないよう慎重にドアを開ける。

廊下に一歩、裸足の足先が触れただけで、寒さのあまり全身が震えた。

なるたけ部屋の暖かな空気が外へ逃げないように、最小限に抑えたドアの隙間から身体を滑り込ませる。


そっと足音を忍ばせてキッチンにたどり着くと、上の戸棚から目当ての缶を取り出した。
指先で探り当てたそれは驚くほど冷たく、危うく頭上に落としかけた。

冷蔵庫から出したミルクを小さな鍋に注いで火にかけると、手にお気に入りの木のスプーンを持ちミルクをかき混ぜる。自然と、数刻前まで解いていた数学の問題へと思考が飛ぶ。



センター試験を目前に控えたここ数日。試験に備えて生活リズムを朝型へ切り替えなきゃ、と頭ではわかっていても気がつくとこの時間まで集中してしまう。気を抜くと余計なことばかり考えてしまうから、トイレに行くときですら参考書が手放せなくなってしまった。




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