敢えて言葉にするならば[完]

キスは乙女の夢?



あんなの、キスじゃない。キスなんてロマンチックなもんじゃない。


唇を伝って細菌を私に寄越そうとしたあいつの嫌がらせだ。


・・・そう、言い聞かせてるのに。




「こら、ぼーっとしない」

「え!?」


不意に頭を小突かれた。

見上げるとそこには上司の森谷(もりや)さんが立っている。


しまった。今は勤務中なのに。
しかもまた思い出してしまったなんて。



「・・・すいません」

「大丈夫か?調子悪そうだが」

「大丈夫です。少しぼーっとしちゃって」

「気をつけろよ。今荒川の野郎が風邪菌飛ばしてやがるから」

「はい」


マスクしながら働いてる荒川君を見て、自分に渇を入れる。


しっかりしろ私。
もう、社会人なんだから。



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