サイドウォーク【完】

サイドウォーク

 

 がやがやと騒がしい居酒屋、店全体で少人数のグループで飲んでいる雰囲気、やはり好きだ。こういう雰囲気でお酒を飲むのが、とにかく好き。


「うん、美味い」

「本当? 私も食べよ」


 時刻は20時の少し前。ユウスケさんの銀杏を食べる横顔を見て美味しそうに頷く彼に笑顔を見せながら、私も食べてみる。つまみづらい銀杏を器用に箸で掴んで、ゆっくりと口へ運んでいく。口に落とし込み、奥歯でグッと噛みしめてみた。


「どう?」

「あ、美味しいかも」

「でしょ、初銀杏」

「うん、初銀杏」


 ふふっと微笑みながら腰に手を回し私をぎゅっと抱きしめる彼に、また私も笑みをこぼす。ふと横を見ると、席について早々私が頼んだモツ煮込みと赤カブ漬けがまだ残っているではないか。手早く焼酎を一口飲み干し、モツとごぼうを一緒に口へ運ぶ。美味しい。赤カブにも箸をつける。美味しい。安定の美味しさ。大衆居酒屋ならではの美味しさである。


 
「美味い?」

「美味しい。お酒が進むね」

「ね、お疲れ様」


 と、今度は私を見つめながら頭に手をぽんぽんと二回置き直し、わしゃっと髪を撫で下ろす。その仕草に私もにこりと微笑む。そしてビールを仰ぐ彼。まだ出会ってから4ヵ月しか経っていないが、私は思う。


「トモカちゃん、レバー食べる?」


 ユウスケさんは、とんでもなく甘いのだ。「食べる、ありがとう」と言うと、うん、とまた優しい笑顔で目を見てくれる彼。甘いといってもべたべたしてくるの甘いではなく、私をとことんお姫様のように扱ってくれるような、そんな気がするのである。


「ユウスケさん、私に優しいよね」

「ん?」

「なんか、いつも目見てくれるし」


 アイコスの煙をぷはーと吐きながらユウスケさんは頷いてそれを机に置いた。


「初めて会った時から好きだから」

「え? そうなの?」

「うん」


 照れたように笑いながらアイコスを口にし、膝に置いてあった私の手をぎゅっと握って来るユウスケさん。その言葉に驚きで心臓が高く鳴りながらも手を握り返す。

 

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