トラモント【完】

トラモント

 

 私のお母さんが死んだとき、ゴロウちゃんがそばにいてくれた。私はまだ小さくて、ゴロウちゃんは大きな手で私の小さな手を包み込んで、もう大丈夫だよってずっと言っていてくれた。何が大丈夫で、何が大丈夫じゃないなんて、そんなのわからなかった。でも、私のそばにゴロウちゃんがいれば、何もいらないんだと思ってた。ゴロウちゃんが私の家族で、私の全てなんだって思っておけば、全てうまくいく気がした。


「――――シュナ」


 ゴロウちゃんはいつも少しこもったような暗い声で私の名前を呼ぶ。シュナ、シュナ、って私の名前を呼んでくれるのはゴロウちゃんだけだった。誰よりも優しくて私を一番に考えてくれるゴロウちゃんは、いつも私のそばにいてくれる。


「今日も愛してる」


 いつも出会い頭、ゴロウちゃんはそう言うと恥ずかしげもなく私を頭の上から抱き締める。ゴロウちゃんは私の背中と頭に手を回しきつくきつく抱き締める。誰が見ていたって関係ない。ゴロウちゃんは私のことを抱き締めた後決まって悲しそうに笑う。その笑い方が無理しているようで、私は大丈夫だよ、という意味を込めてゴロウちゃんの左の頬に手を添える。何も悲しいことなんてない。私にとって、ゴロウちゃんがいないことの方が悲しい。


「ありがとう」


 ――――悲しい顔は、ゴロウちゃんには似合わない。

 

0
  • しおりをはさむ
  • 2
  • 2
/ 6ページ
このページを編集する