源義経黄金伝説 第八章 一一九〇年 花の下にて我死なむ●奥州黄金の行方は?

作者飛鳥京香

聖たちが、西行の草庵の前に立ち並ぶ。「どうぞ、我らに、奥州、藤原秀衡殿が黄金のありか、お教えいただきたい」と、

「いずれにしても、頼朝殿は、東大寺へ黄金を差し出さねばのう。鎌倉殿の箔が付かぬという訳か。いずれは、大江広元殿が入れ知恵か」

西行はあざ笑うように言う。

「西行殿、そのようなことは、我らが知るところではない。はよう、黄金の場

所を教えられよ」

「次郎左よ、黄金の書状などない」

「何を申される。確か、我々が荷駄の後を」

「ふふう、まんまと我らが手に乗ったか。黄金は義経殿とともに、いまはかの国に」

「義経殿とともに。では、あの風聞は誠であったか。さらばしかたがない。西行殿、お命ちょうだいする。これは弟への手向けでもある」

「おお、よろしかろう。この西行にとって舞台がよかろう。頃は春。桜の花びらが、よう、舞いおるわ。のう、太郎左殿、人の命もはかないものよ。この桜の花びらのようにな」

急に春風が、葛城の山から吹きおち、荒れる。つられて桜の花片が、青い背景をうけて桃色に舞踊る。