Stay with me 前編【完】

Chapter1 /桜の葉園





梅雨明けの本格的な夏の始まりを予感させる強い日差しの中、大きくも小さくもない旅行鞄を抱え、駅までの道を歩いている時だった。


「沙良ちゃん!」


車のクラクションと共に見知った声に呼び止められる。


「…涼子先生?」


運転席の窓から顔を出したのは、穏やかな笑顔を浮かべた50代の女性。年相応の品がある綺麗な人。


「どうしたんですか?」

「今日からまた一緒に住むんだもの。沙良ちゃんを迎えに来たのよ 」

「そんな……わざわざすいません」


有須川涼子先生は実の親に捨てられて宮内夫妻に引き取られるまでの2年間を過ごした、児童養護施設「桜の葉園」の園長だ。





──… 1カ月前


養子縁組を解消したいと園長あてにも宮内夫妻から連絡があった。

17歳で高校2年生である私は、義務教育を終えている。だから宮内家を出た後は学校を辞めて働き、1人で自活するつもりだった。


でも、それを涼子先生は断固反対した。園に戻り、一緒に暮らそうと何度も申し出てくれた。


「職員の人手が足りないの。他の子供たちの面倒を一緒に見て貰えたら助かるわ 」


迷惑を掛けたくないことと、義務教育を終えた身でまた園に戻ることの申し訳なさに最初は断り続けたけど、なんの貯えもなかった私にとって、正直、涼子先生の申し出は有難かった。

お小遣いとよばれるものは与えられなかったし、アルバイトもさせて貰えなかったから。


どうするべきかすごく迷ったけど、こんな私でも役に立てるなら………そう思って、また桜の葉園に戻ることを決めた。







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